性同一性障害による戸籍名の変更  【 司法手続 】

2.改名の司法手続

 改名の許可を求める審判を申請することができる家庭裁判所は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。(特別家事審判規則第4条具体的な管轄は最寄りの家庭裁判所に問い合わせてください。

(1)審判の申し立て
 家庭裁判所の窓口で「名の変更許可申立書」をもらい、必要な事項を記載して関係書類(次項に記載)を添えて提出します。

名の変更許可申立書(pdf形式)

※  申立ての実情欄 8 その他に『性同一性障害による改名』と記載する。

(2)必要書類
 改名手続についてその運用が各地の家庭裁判所により若干異なるようなので、申し立てに必要な書類についてはそれぞれの家庭裁判所の窓口にご確認ください。

 なお、家庭裁判所では提出された書類の内容について確認を行うほか、独自に調査を行っていると思われます (家事審判規則第7条〜第8条)。

 以下には、私が改名の申請を行ったときに提出した書類を参考として記載します。

1)名の変更許可申立書
2)収入印紙(800円、申立書に貼附 平成23年4月現在)
3)郵便切手(80円切手5枚、1,040円分の切手1組)
4)戸籍謄本、住民票
5)写真(職場などでの写真)
6)性同一性障害の診断書(精神科の医師による)
7)去勢済みの診断書(産婦人科、または形成外科の医師による)
8)新しい名の利用実績を明らかにする書類等
○公共料金の領収書(払込用紙、日付があるもの)
○郵便物(消印があるもの)
○宅配便、通信販売などの受領書(日付があるもの)
○職場で使用している名刺
○職場で着用しているネームプレート
○職場や趣味などの名簿類(発行日があるもの)
○薬局やスポーツ倶楽部などの会員カード(発行日があるもの)
○電子メール、インターネットによる予約や物品購入など使用実績(日付があるものを印字して提出)
9)親の同意書
 子が名を改名することに同意する旨を記載して、署名のうえ捺印したもの(これは申立人が未成年者の場合には必須ですが、成年者の場合には申し立ての補強資料となるので提出しました。)

(3)審判の開始
 審問を行うための審判期日の通知(審判期日呼出状)が家庭裁判所から申立人宛てに郵送されてきます(または、申請時に書記官から手渡されることもあるようです)。

(4)審問
 審問には、申立人本人の他に、家事審判官(裁判官のこと)、参与員(家庭裁判所が選任した人、社会福祉関係に従事されている方々が多いようです)、家庭裁判所書記官の3名が同席して、審判室で行われます。

 私の審問では、提出した書類の確認を行うとともに、審判官や参与員から以下の事柄について質問がありました。

○本人の経歴、家族構成、就業状況
○幼年期から思春期にかけての生活、意識、行動など
○成人以後今日に至るまでの生活、意識、行動など
○職場における仕事の内容、人間関係など
○心と身体の性が不一致だと感じたのはいつごろか、なぜそのように感じたのか
○改名したいと思ったのはいつ頃か、なぜ改名したいのか
○新しい名(家庭裁判所に提出する「名の変更許可申立書」に記載したもの)を選んだ理由、家族の反応
○現在のパートナーの有無、経済的な関係
○将来の人生設計

(5)改名許可の審判
 審問の後、改名の申し立てについて「正当な事由」があると家事審判官が判断した場合には改名許可の審判がなされ、後日(概ね3ヶ月程度)本人宛に家庭裁判所の書記官から審判書の謄本が郵送されてきます。

 なお、改名の申立を却下する審判が下された場合には、却下された事由を解除できれば審判を再度申し立てることができますが、却下の事由に納得がいかない場合には即時抗告を行うこともできます。(特別家事審判規則第6条)


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